Eric HosmerとRoyalsの行方。

"傘下最高のプロスペクトを放出してでも、本物のスターターを獲りに行く。"
今オフしきりに囁かれていた噂は、本当だった。

<Royals → Rays>
Wil Myers + Jake Odorizzi + Mike Montgomery + Patrick Leonard
<Rays → Royals>
James Shields +  Wade Davis + PTBNL

このトレードが何を意味するのか?
もちろん、2年以内にプレーオフに行くという意思を示したと言う事だ。
Raysが?いや違う。Kansas City Royalsがだ。

酷く馬鹿げた話に聞こえるだろう。私もそれを否定するつもりは無い。
実際、中地区でTigersを倒すのは"奇跡的な何か"を起こさなければならないし、ワイルドカードも相当苦しい。それでもやり遂げなければ、このチームには何も残らない。そのためには、掻き集めた先発投手陣の活躍は絶対条件だし、打者ではMike Moustakasのブレイクも必須だ。もちろん、Billy ButlerとAlex Gordonの力も欠かせない。

Eric Hosmer?
彼が中心になれないようなら、このRoyalsの賭けは負けたも同然だ。

2008年のドラフト1順目(全体3位)でRoyalsに指名されたHosmerは、当時のチーム史上最高額となる契約金を得て、大きな期待と共にプロのキャリアをスタートする。マイナーでのプレーは必ずしも順調だった訳ではない。実質的には最初のシーズンとなった2009年に拳を骨折、さらには極度の乱視に悩まされ、そのオフにレーシック手術を受ける事となる。19歳のシーズンは躓きを経験した。しかし翌年、視力が回復すると評判に違わぬ実力を見せはじめる。そして2011年のシーズンを前にしてBaseballAmerica誌から、傘下でも最高のプロスペクトと評される事になる。それから数ヵ月の後、Hosmerは満を持してMLBにデビューする。

ルーキーイヤーのスタッツは.293/.334/.465 HR19。新人王こそ逃したものの3位の得票数を得た。BB%6.0は平均(8.1%)を下回るものの、全体的には申し分ない成績だ。Kansas Cityでオールスターが開催される2012年を前に、Hosmerに対するファンの期待は膨らむ一方だった。

この若者の未来は明るい。2年目のジンクスなど関係ない・・・。
"It's Our Time”のスローガンと共に、RoyalsとHosmerの2012年が開幕する。

しかしHosmerは、いきなり4月に躓いてしまう。スプリングトレーニングでの好調が嘘のようにヒットが出ない。Hosmerの不調と歩みを揃えるようにチームの成績も低迷する。12連敗を記録するなどして、Royals早くも優勝戦線から脱落してしまう。

この時期のHosmerが放つ打球は、ことごとく相手チームの敷くシフトに引っかかっていた。
守備側が強打者に対して極端なシフトを用いる事は、それほど珍しい光景ではないが、今年は特に多かった。Hosmer自身、極端なプルヒッターではないのだが、ゴロを打つ確立が他の打者より高い傾向を示している。今年の一二塁間の打球に限って言えば75.9%がゴロ(例えば、Alex Gordonは62.5%でButlerは67.6%)で、シフトに引っかかる要素が他の打者より大きいように思われる。シーズンのスタートで彼が大きく躓いた原因(低すぎる4月の月間BABIP.164も含め)を、私もそこに求めた。ボールを上げることさえ出来れば、Hosmerは結果を得ることが出来るだろう。事実、彼の放つ打球は鋭いものが多かったし、サンプルは少ないものの、HR/FBは前年の13.5%を上回る21.7%を記録していたので、打者としての進化(BB%も10.5)も感じていた。

スピードを武器にしている打者なら、転がして内野安打を狙うのも立派な技術だろう。
しかしHosmerはそういうタイプの打者ではないし、もっと別の期待を掛けられている。もちろん、これはHosmerにスピードが無いという意味ではない。それよりも、多くの打球を外野へ飛ばすことが彼の役割だ。本拠地のKauffman StadiumはHRこそ出難いものの、センターが深いので間を抜けるとツーベース、スリーベースが狙えるし、それがこのスタジアムで得点を挙げる大きな手助けとなる。打球別のデータで見ると、2002~2012の期間におけるMLB全体のゴロの打率は.232で、wOBAになると.214だ。ラインドライブは当然ながら、かなりの確率(.720)でヒットになる。フライはゴロより悪い.219の打率だが、wOBAは.332(SLGは.607)となる。このような単純な話ではないのかもしればいが、ゴロだけを増やしても(ましてやシフトを敷かれている中で)Hosmerの価値は上がらないのではないか?そんな風に考えていた。

5月に入ってからのRoyalsは幾分かだけ盛り返すが、Hosmerの状況はますます悪化していくように見えた。バッティングアベレージこそ若干の上昇を見せたが、相変わらず打球は上がらない。HR/FBは4.0%と悲惨を極め、GB%は55.7%にまで達した。そして残念な事に、このゴロが多い傾向はシーズン終盤まで続くことになる。


上図はHosmerの打球傾向(左)と、2002~2012のMLB平均(右)を表したグラフだ(クリックで拡大)。MLBの過去10年間の平均ゴロ%(GB%)が43.95%、ラインドライブ%(LD%)が19.59%、フライボール%(FB%)は36.11%となっている。Hosmerの2年間の傾向と変化を見てみよう。まず2011年のゴロ%は49.7%、ラインドライブ%は18.5%、フライボール%は31.7%となっている。上でも述べたように、2011年のHosmerは平均よりやや多いゴロ%を示していた。特に7月と8月は高く、それぞれ54.7%、60%となっている。ただし、昨年は目立ってシフトを敷かれる事は比較的少なかった。それ以外の月では43.4%~45%の間にとどまっている。平均レベルに近い数字だ。

それでは2012年はどうか。ラインドライブ%はほぼ同じ18.5%だが、ゴロが約4%増加して53.6%、その分フライボールが減って27.9%。GB/FB(ゴロとフライの比率)で見ると、1.57から1.92に増加(ちなみに、この2年のMLB平均は1.24→1.33となる)。ゴロ率53.6%がどれくらいの数字かといえば、2012年場合だと規定打席をクリアしたMLBの選手のなかで、上から12番目に入る数字だ。Derek Jeterの名前も上から2番目にある。ちなみに、HosmerのGB/FBは上から20番目に入る。どちらかというと上位に名前を連ねているのは、リードオフタイプの選手や、長打力以外の部分が売りの選手に見える。つまり例のシフトを敷いて対応するような打者達では無いのではなかろうか。この並びで見ると、Hosmerは内野安打もそれほど多くはない部類に入る(しかしMichael BournよりHosmerのほうが内野安打が多いのには驚きだ。たとえそれが2本だけだとしても)。

ここで注目したいのはGB%のランキング。左打者のJoe Mauerの名前がHosmerのすぐ下にある。Mauerの今年のGB%は52.6%で、キャリアで見ても50.3%ある。平均以上の数字だ。しかもライト方向へのゴロ率は85.1%もある。もちろんスピードで勝負するタイプではないので、内野安打は少ない。しかしMauerには、優れたバットコントロールがある。彼にシフトは通じないのではないか?データを見てみると、Mauerの打球方向別打率はライト方向 .306 、センター方向 .406 、レフト方向 .429となっている。引っ張っての打率が一番低いとはいえ、それにしたって.306は上出来だろう。やはり無駄なのか?興味深いのが、打球方向別のラインドライブ%で、ライト方向が11.5%なのに対して、センター方向25.7% 、レフト方向38.3%となっている。ゴロ%もレフト方向に対しては21.3%しかない。なるほど、Mauer相手にもシフトを敷く意味はあるのかもしれないと思えてきた。レフト方向にあまりゴロを打たず、ライト方向(85.1%)とセンター方向(50.3%)へのゴロが多いMaureをフィールド内で仕留める手段としては、ある一定のゾーンを締めることは有効なのかもしれない。それでも彼なら自在にヒットゾーンへと打球をコントロールするかもしれないが・・・。

では、HosmerとMauerの違いはどこで生まれるのか?。
大まかな2人の共通点は、ゴロ率の高い左打者で、スピードタイプではないというところか。
MauerとHosmerのデータを並べてみる。

<打球方向別打率>
Hosmer : ライト方向.188 ・ センター方向 .257 ・ レフト方向 .442
Mauer   : ライト方向 .306 ・ センター方向 .406 ・ レフト方向 .429
<打球方向別ゴロ%>
Hosmer : ライト方向 75.9% ・ センター方向 52.2% ・ レフト方向 27.8%
Mauer   : ライト方向 85.1% ・ センター方向 50.3% ・ レフト方向 21.3%
<打球方向別ラインドライブ%>
Hosmer : ライト方向 16.6% ・ センター方向 13.6% ・ レフト方向 28.7%
Mauer   : ライト方向 11.5% ・ センター方向 25.7% ・ レフト方向 38.3%

レフト方向への打率はHosmerの方が高い。これは内野安打%が他の方向に比べて極端に高くなっているのも関係しそうだ。ライト方向、センター方向にはそれぞれ4%程度に対して、シフトの影響もあってかレフト方向へは18.8%もある(当然、この内野安打が無くてもHosmerのレフト方向への打率は高くなるだろう。守備シフトを敷くという事は、三遊間に野手が1人だけになるという事なのだから、必然的にヒットゾーンは広がる)。Mauerの場合は全方向にほぼ均等で2.3%~3.5%となっている。レフト方向へのゴロ%が両者でそれほど大きな差を見せていないので、相手チームはMauerにそれほどシフトを敷いて無かった事が伺える。ラインドライブ%は両者の間で差が出た。Mauerがセンターからレフト方向に掛けてラインドライブを放つのに対し、Hosmerはレフト>ライト>センターの順だ。全体のラインドライブ%を見てもMauerの25.0%に対して、Hosmerは18.5%となっている。最近10年のMLB平均が19.59%なので、Mauerは優秀なラインドライブヒッターだ(今年は全体で9番目に多い)。一方のHosmerは平均をやや下回るレベル。今年のフライボール%も比べてみよう。Mauerは22.4%でHosmerが27.9%となる。両者共に過去10年の平均(36.11%)を下回っている。あまり打ち上げないタイプだ。(パワー面で見ても、IsoP(長打率 - 打率)が両者ともに.127を記録しているのは面白い。)
やはり同じゴロの多いタイプでも、ラインドライブ%とその打ち分けが差を生んでいると言っていいだろう。

今更だが、Hosmerは打球傾向を見ても判るとおり、純粋な長距離打者というタイプではない。マイナー時代の成績を見ても2010年のAA(50試合/211打席)で記録したIsoP.303が突出しているだけで、それ以外で.200を越えたシーズンは一度(MLB含む)も無い。どちらかというと中距離打者寄りだ。Hosmerが目指すべきは、ラインドライブを多く打てるようになることだろう。それに加えてフライ%では無く、ゴロ%を減らす事が出来たなら長打の増加も期待できる。幸いにもRoyalsには優秀なラインドライブヒッターが二人(A.Gordon/Butler)もいるのだから、いくらでも参考にすれば良い。

4月~5月の期間、結果の出ない時期が長く続いたためか、Hosmerのバッティングフォームが頻繁に変わりだす。明らかに彼は焦っていた。より強い当たりを、野手の頭の上を超えるような打球を、と。

結局、最後までしっかりとしたスイングの形を整える事が出来なかったように思う。

打席では無駄な力みを感じ、上体にばかり力が入ってるように見えた。
もちろん、私はスカウトマンでもなければ、プロのレベルでプレーした経験なども無い。どこにでもいる様な、ただの野球好きだ。だから、本当のところは分からない。結果が出ない時間が続くと、その選手がどのようなフォームをしていても酷く見えてしまう事もある。Hosmerに対しても、そうだったのかもしれない。画面越しにもどかしさを感じながらも、それでも私は自分なりの解決策を考えてみる事にした。

まず結論から言えば、Hosmerのスイングの大きさがミスショットを招き、ゴロ%の増加やラインドライブ%の低迷に関連しているのではないかという事だ。

左は2011年MLBデビュー時のもので、右が2012年のものだ。
これを見てどの様に感じるだろうか?何度見ても、私には左のほうが良いスイングに見える。やや左肩が下がる事でアッパー気味のスイングになるのだが、上半身と下半身は右の画像に比べてもスムーズに連動できているし、それほど多くの動きが入っていないので、タイミングの取り方はシンプルだ。

Hosmerが右のように足を上げてタイミング取るようになったのは、2011年の7月の中旬あたりからだ。ここで少し前の記述を思い出して欲しい。デビューイヤーのHosmerがゴロ%を増加させたのは?そう7月と8月だ。そしてこの時期のラインドライブ%も下降している。少し判りづらいが、デビュー当時と比べると、所謂トップの位置に入る前にバットを立て気味にして前後に揺らす動作も取り入れている。左画よりも右画のほうが、後ろが深くなっており、その事でスイングの幅も大きくなっている。これらの変化は、より多くの長打を求めてのものだろうと私は解釈している。大きなタイミングの取り方なので、必然的に体の始動も早くなる。足を下ろし始めるあたりからバットを捕手側に引き始める。2度タイミング取るような感じだろうか?非常にややこしい動きだなと思う。また、右の画像からはボールを思い切り引っ叩こうとして、力んでいるような印象を受ける。

次に、上の画像とは別の打席のものだが、横からのアングルのものを掲載する。

左は2011年の足を上げるようになってからのものだ。右は2012年のもの。
基本的な動作は左右で大きくは変わらないが、左肩から肘にかけての使い方と、体の捻りがポイントなのだろうか。右は投手側から見た画像同様に下半身と上半身のバランスの悪さを感じるが、より捻りが効きそうなのはこちらの方かもしれない。インパクト後に起こる下半身のアクションが印象的で、踏み出した右足の膝や股関節などには相当な負担が掛かっていそうだ。Hosmerの打席ではこのアクションを頻繁に見かけるので、怪我が心配でもある。タイミングは崩されやすそうに見える。一度振りに行ったら最後、見送るべきボールに対してもストップが出来ないのではないかと感じる。事実、O-Swing%(ストライクゾーンを外れたボールに対するスイング%)は33.5% 、O-Contact%(ゾーンを外れたボールに対するコンタクト%)は74.5%で、共に平均よりも多い。もちろんミスショットが増えそうな事は、この動きからも想像ができる。スイングスピードも左の方が出そうだが・・・。ちなみに、この打席(右図)の結果はセンターオーバーの2ベースヒットだ。

付随して、投手がhosmerに対して投じた球種の変化も記しておこう。
前年に比べ、比率を増やしたのがツーシーム(シンカーも含む)とカーブだ。

ツーシーム:8.1%→13.9%
シンカー:6.8%→7.9%
カーブ:9.4%→11.9%

減らしたのがフォーシームで、39%→30.5%となっている。
その他の球種の割合には2年間で大きな変化は見られない。足を上げてタイミングを大きく取り、スイングの幅も広がった2012年のスタイルでは、ツーシームのような手元で微妙に変化するボールや、タイミングを狂わせるカーブなどへの対応が難しくなってしまいそうだが・・・。そういった所を相手が見越しての比率の変化なのか、全体のトレンドなのか。この辺りは難しいところだが、どちらにしろ対応力は前年のスイングメカニズムのほうが有りそうだ。

Hosmerがマイナー時代に比較されたJoey Vottoのスイングを参考にしてみる。Vottoは非常に優れたラインドライブヒッターであり、ゴロの少ない打者だ。そして、それがこの画像を貼り付けた最も重要な理由だ。

体重移動などのメカニズム自体に関しては、Hosmerとは別のタイプに見える。
始動からインパクトまで、頭の位置はほとんど変わらない。目線もぶれてなさそうだ。よくボールが見えているのだろう。踏み込む足の着地はとてもソフトだ。溜めがあって、短くコンパクトなスイング。無駄な力もまったく感じない。端的に言って、非常に美しいスイングだと思う。予期せぬ変化に対しても強そうだ。

投手側からの画像だけみると、メカニズムは違えどデビュー当時のHosmerのほうが、これに近いコンパクトさを持っている(捕手側にバットを引く動作がVottoよりも大きいため、ここまでのコンパクトさは無いが)。つまりHosmerには、2度タイミングを取る動作が入るような、みるからに複雑なメカニズムではなく、シンプルで短くてコンパクトなスイングが必要なのではないか?とVottoを見ても思う。

2012年のシーズンが終わって約3ヶ月。Royalsは大きな賭けに出た。
もう中地区3位で満足していられない。プロスペクトの台頭を夢見るだけのシーズンじゃなく、MLBの舞台で勝つために。この先2年はなりふりなど構っていられない。

Eric Hosmerは最終的に .232/.304/.359 HR14でシーズン終えた。最低のシーズンだったが、何一つ成長できなかった訳ではない。ディフェンス面では左右の打球に対して弱さを見せているものの、悪送球をすくい上げる技術は非常に高い。今年はゴールドグラブにもノミネートされた。攻撃ではBB%は9.4%まで向上させる事ができたし、打席あたりに投じさせる球数もほんの少しだけ多くなっている。HR数やIsoPは減少したが、200feet以上のHRとフライボールの平均飛距離は293feetから297feetに伸びている。成熟に向かって進んでいるのはちゃんと伺えるし、パワーが無くなったわけでもない。勝負の2013年~2014年に向けては、Kevin Seitzerに変わってバッティングコーチに就任したJack Maloofの存在も重要になってくるだろう。

今年のEric Hosmerには果てしなく遠い場所だったオールスターゲーム。
でも、Royalsファンは彼がその舞台に立つことを、未だ信じている。
もちろん近い将来、チームをプレイオフに導いてくれる事も。

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記事中のデータは FANGRAPHS / BASEBALL-REFERENCE.COM のものを使用しています。

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