ローテーション再編

Zack GreinkeとDodgersの契約で持ち切りだった世間の話題を、
Raysとのブロックバスタートレードで一気に掻っ攫って行ったKansas City Royals。あれから数日経って、私もようやく落ち着きを取り戻した。James Shieldsが素晴らしい投手だという事に疑いの余地はないし、Wade Davisも悪くない。

再編されるローテションの中で、Davisはおそらくスターターの役割を与えられるだろう。Hochevarはスウィングマンでの起用が濃厚で、Mendozaはきっとブルペンに回る。Will Smithは現状、MLBに残れるかどうかも怪しい。このまま行けば、Shields,Guthrie,Santana,Davis,ChenがRoyalsのローテーションを担う。

アメリカンリーグ中地区のライバル達も、指を加えて見ているだけではない。
先発ローテーションに限ってみても、ワールドシリーズ制覇をめざすTigersはAnibal Sanchezを引き止めることに成功(5年$80M!!)。White Soxは相変わらず強力なローテーションを保持しているし、TwinsもCorreiaとWorleyを獲得し改善してきた。IndiansはD.BacksからトッププロスペクトのTrevor Bauerを獲得する事に成功した。

それでは、Royalsの新しいローテーションはAL中地区においてどの程度の水準にあるのか?
下の表は、現時点でローテーションに入るであろう投手達のERA+(投手の防御率をリーグ平均と比較して評価する指標。球場補正も考慮する。)を並べたものだ。


RoyalsTigersW.SoxIndiansTwins
No.1J. Shields (108)J. Verlander (160)C. Sale (129)J. Masterson (79)K.Correia (88)
No.2J. Guthrie (94)D. Fister (137)J. Peavy (142)U. Jimenez (72)V.Worley (95)
No.3E. Santana (73)M. Scherzer (113)G. Floyd (101)Z. McAllister (92)S.Diamond (115)
No.4*W. Davis (85)R. Porcello (92)J. Quintana (115)C. Kluber (76)L.Hendriks (73)
No.5B. Chen (81)D. Smyly (106)J. Danks (76)J. Gomez (65)C.De Vries (99)
L. Hochevar (71)**A.Sanchez (105)*C.Carrasco (85)
W. Smith (77)
L. Mendoza (97)
※()内の数字がERA+。100を平均として、数字が大きくなるほど優秀。*は2011年の成績。

贔屓目に見ても、RoyalsのローテーションはTwinsより少しマシ程度(HendriksとDe Vriesの投球回数は100イニング以下)で、やはりTigersやWhiteSox(怪我で満足に働けなかったDanksを入れても)には見劣りしてしまう。2012シーズンを平均以上の水準で戦えたのはShields1人しかいない。GuthrieはRoyalsに移籍して以降に限れば130だが、91イニングでの成績だ。DavisはRaysのブルペンで良い仕事をしたが、先発となると一抹の不安が残る。夏場にはTJ手術を受けたDanny DuffyとFelipe Paulinoが帰ってくるとはいえ、彼らが本領を発揮するのは、おそらく2014年になるだろう。

このトレードでRoyalsのローテーションは、間違いなく強化された。ただし、それはには "2012年のRoyalsと比較して" という注釈が付く。現段階では、ライバルチームに対してアドバンテージを持つには至っていない。Jake Odorizziをトレードのパッケージに含めた今、マイナーからの補充も期待薄だ。よほどの事が無い限り、今の戦力で来シーズンはローテーションを回していくことになる。プレーオフが厳しいことには変わり無い。

ここからは新戦力ついて触れてみよう。
Angelsからトレードで獲得したErvin Santanaはキャリアワーストのシーズンを送った後だけに、どうしても不安が付きまとう。

Santanaの持ち球はフォーシームとスライダー。そこに時折チェンジアップを混ぜるスタイルだ。
Ervin Santana Pitch Type 2012
最近のSantanaを語る際に避けては通れないのがフォーシームの球速低下だろう。右のグラフはSanatanaが投げる各球種のスピードを、年毎に平均球速で表したものだ(クリックで拡大)。黒いラインがフォーシーム(FA)になる。2008年のピーク時には平均94.8mphあったものが、2012年には91.7mphまで落ち込んでいる。それに伴ってか、空振りを取る確率も、やや右肩下がりだ。FAの被打率を見てみると、例年とさほど変わらない(.288)のだが、HR/FBが16.3%にも及び、被IsoPは.267とキャリアと比べても異常に高い数字となっている。しかし、この問題はフォーシームだけのものではない。投球全体の約40%を占めるスライダーのHR/FBも21.4%で、ファストボール以上に多い。その結果、投球イニングが昨年と比べて50イニングほど少ないにも拘らず、シーズンの被本HRが前年に比べ13本も増えて、アメリカンリーグ最多となってしまう。被打球傾向(GB,LD,FB)は2011年から引き続いてゴロの比率を増やしているにも関わらず(GB/FB 1.16)、SantanaはHRを浴び続けたのだ。

29歳という年齢を考えれば、肉体的な衰えによるスピードの低下も考えられる。
投球フォーム的にはどの様な変化を遂げているのだろう。

左が2012年で右が2008年の投球フォーム。足を上げた時の姿勢が随分違う。

背中のラインに沿って線を引くと違いが判りやすい。左のほうは体を一塁側に傾け気味の姿勢を取っている。右の2008年のものはほぼ真っ直ぐだ。写真は無いが、腕を振り降ろすスピードは右の方が早く、より長い時間、背中越しにボールが打者側へ露出する。

腕が下がりきった所で前足を踏み込む。赤いラインは両肩を結ぶイメージで引いてみた。先ほどの写真同様、2012年のフォームのほうが傾きが多い。より軸足に体重をのせるという意図があるのだろうか。左手の高さとグラブの向きの違いにも、注目しておきたい。

まず一目見て肘の高さの違いに気が付くと思う。右の方が高い。そしてリードする左腕にも違いが出る。どちらが"弓を引ききった状態"かと言われれば、私は右と答えたい。

 左の写真は踏み込んだ足が一塁方向へ開いている。若干、体の軸も傾いているように見える。これではリリース時にボールに力がこめられないのではないだろうか。画像が不鮮明だが、このタイミングでも右の方が肘を高く上げているように見える。最後の写真を見てみよう。

TVカメラの具合だろうか、左の方がより沈み込んでいるように見える。
肩から肘のラインもやはり2012年の方が低く出ている。軸足と頭の位置をみると、やはりやや傾いて開き気味のように感じる。プレートの位置にも関係があるのだろうか。ここから先のリリース→フォローの流れにそれほど大きな違いは見つけることが出来なかった。とは言え、後ろからの画像でもこれほど差が出るのだから、真横から見た場合はもっと大きな違いなのかもしれない。どちらが好みかといえば、私は軸がしっかりしている2008年のものを選ぶ。


フォームの変化がもたらしたものは、球速のみならず、球筋にも現れている。右のグラフは各球速の水平方向への変化を表したものだ。先ほどと同様に、黒いラインがフォーシーム(FA)になる。やや三塁側へ変化していた軌道は、年々フラットなものになり、スライダー(赤いライン/SL)との差が小さくなってきている。ストライクゾーンの取り扱いは下図で確認できる。左がフォーシームで右がスライダー。2012シーズンのものだ。赤いドットがストライクで緑がボールとコールされた投球。マップは打者からの視点で見て欲しい。つまり、左が三塁側で右が一塁側ということになる。
Santanaは基本的にはFAとSLの2ピッチタイプなので縦の変化はほぼ無い投手だ(チェンジアップは左打者相手に少しだけ使うのみだ)。ボールの軌道を上手く見せて相手を混乱させたいところだが、フォーシームがゾーンの低めに集まらないので、ボールになるスライダーも見切られてしまうか、抜けたところを痛打されるという展開が続いてしまった事がこのマップから想像出来る。

5年もたてばフォームが変わることも何ら不思議ではないし、その時の状態によって、Santana自身がより良いフォームを選んでいった結果が現在の姿なのだと思う。当然ながら、Santanaの球速は2008年のものには戻らないだろう。肉体の衰え云々ではなく、動作が変わってしまったのだから。今後の彼に多くのものを望むのは厳しいかもしれない。フォーシームの威力が落ちるという事は、スライダーの効き目も落ちるという事だ。高すぎたHR/FBの揺り戻しがあれば被HRは減るだろうし、今年より少しでも良い成績を残してくれるのならば御の字だ。それが$13Mに相当するかは、私が考える問題ではない。

James Shieldsに関しては何も心配していない。2011年のような成績は無理だとしても、彼らしいハイレベルな投球を年間通じて見せてくれるだろう。Santanaにあるような球速の低下も見られないどころか、今年キャリアでも最も速い平均球速(92mph)をマークしている。200イニング以上を6年間投げ続けてなお、彼はまだフレッシュだ。Shieldsの存在はブルペンにも、必ず良い影響を及ぼすだろう。

Wade Davisは自身が待望したスターターへの返り咲きが濃厚。
さすがにShieldsレベルのものを求めるのは酷だが、少なくともHochevarよりは良い。2012シーズンは、平均93.7mphを記録したファストボールと、バリューの高いスライダーとカーブを武器に、リリーフで高い奪三振能力を見せたが、ここら辺りはあらかじめ割り引いて考えないといけないだろう。万が一適応に苦しむようなら、ブルペンに回しても良い。結果としてRoyalsの強みでもあるブルペンに更なる厚みを加える事が出来るなら、間違っても"最低"の新戦力にはならない無いはずだ。

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記事中のデータは FANGRAPHS  Brooks Baseball TexasLeaguers.com のものを利用しています。

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