さようなら、Billy



憎たらしいほど落ち着き払った表情で、淡々とアウトを重ねていくMadison Bumgarnerの姿は凡そ20日経った今でも鮮明に思い出せる。チームはよく戦ったと思うし、ワールドシリーズを、それも7試合目まで観る事が出来たのは正直に言って望外だったわけで、そういう意味では満足しているし誇らしくもある。Giantsの強さを素直に認めることも吝かではない。それでも、やはりMadBumの顔は当分見たくはない。アングルやコマンド、配球を含めた度胸とか、色々と後から理由は付けられるが、何しろ、どうやったら打てるんだアイツというようなピッチングだった。だけど、時期も時期だし、思考停止を受け入れて未来の話しに切り替えたい。忘れてしまいたいような記憶は、いつもこんな風に未整理のまま蓄積されていく。僕の脳みそをデフラグしたら、たぶん相当な時間が掛かるだろう。

有り体に言えば、オフシーズンは出会いと別れの季節だ。今年も数多くの選手がユニフォームを変えることになる。長い時間、ファンやチームに良い思い出を残してきた選手だって例外ではない。

$12.5Mのクラブオプション破棄後、FAになっていたBilly ButlerとAthleticsが合意したと公式に発表された。もちろんRoyalsもBilly Butlerと交渉の席を持ったが、提示した契約条件は2年$14~16Mの範囲までで、A'sの3年$30Mには及ばなかった。Billy Butler自身はディスカウントに応じてでもチームに残りたいという意思をずっと示し続けていたが、来シーズンはSalvador PerezやAlex Gordonの負担を軽減させるため、彼らをDHで起用したいという意向をチームが持っていることは、秘密でもなんでもなかった。そのため、もしRoyalsに戻ったとしても、Eric Hosmerにディフェンスで劣るBilly Butlerのプレイタイムの減少は確実で、やはりそれはまだ28歳の選手にとって受け入れ難い話しだったのかもしれない。

Billy Butlerの成績は、シルバースラッガーを受賞した2012シーズンを境にして、ここ2年は下降しており、2014シーズンは151試合でキャリアワーストの.271/.323/.379 9HR。.107IsoPが示すとおりパワーナンバーの減少は深刻。BAとOBPは辛うじてリーグ平均を上回るが、スピードとは無縁のプレースタイルが自身の首を締めている。そんなBilly Butlerに対する今回のAthleticsの提示した条件は、かなり好意的だ。散々ぱら言われていることなので、もはやシークレットソースでも何でもないという気さえするが、ここ数年のA'sはフライボールヒッターを好んでチームに加えている。実際、2012シーズン以降、単年でフライボール%が30%を切ったA'sの打者は一人もいない(最小300打席)。一方で、Billy Butlerのフライボール%は2012シーズンから3年連続で30%未満。これについてはラインナップに多様性を持たせるための選択だという見方もあって、なるほど、それも一理あると頷けるのだが、フロントオフィスからFarhan Zaidiが去った後に獲得したほぼ最初の打者が、これまでは違ったゴロ、ラインドライブヒッターになったという視点も提供しておきたい。

リスクを避けたRoyalsの判断は正しいものだと思うし、Billy Butlerにとっても良い契約になった。
本音を言えばRoyalsのユニフォームを着たまま引退していくBilly Butlerを観たかったのだが、仕方がない。それでも、今年、Mike Sweeneyとチームが果たしたように、何時かBilly Butlerとも再会できる時が来ると良いなと、あの大きな体でKauffman Stadiumを揺らし続けた姿を忘れないよう、気長に待つ事にしよう。

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